フェイクニュースを科学する

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★あらすじ

嘘やデマ、陰謀論やプロパガンダは昔から存在した。これらがインターネット上で拡散していくものをフェイクニュースと一括りにされて語られることが多い。しかし、フェイクニュースは内容や伝達の問題だけではなく、情報の生産者と消費者が複雑に絡み合った情報生態系の問題として捉えるべきだ。それには三つの要素を考える必要がある。

  • 虚偽情報の種類
  • 動機
  • 拡散様式

だ。

また、フェイクニュースを拡散させてしまうのは、人間の認知特性も関係している。「認知バイアス」と呼ばれている、直感や先入観に基づいて注目すべき情報を限定し、過去に上手くいった行動パターンを選択してしまうと言う“癖”だ。認知バイアスには二百以上の種類があり、様々な形で人々の情報取得に際しての行動を規制する。人は見たいものだけを見るという訳だ。

また、ソーシャルメディアなどがそんな人間の傾向を増幅することでフェイクニュースが拡散しやすい情報環境を生み出してしまう。
「エコーチェンバー」と呼ばれる状況がある。ソーシャルメディアを利用していると、自分と似た興味・関心を持つユーザーばかりフォローして、同じようなニュース・情報が流通する(エコーする・こだまする)、閉じた環境を作ってしまう。そんな“小部屋”、“箱”(チェンバー)の中にいるような状況が実際のソーシャルメディアで起きていることを示す研究結果が色々と出ている。そして、見たいものしか目にすることがない状態になってしまうのだ。そんな場は、フェイクニュースを生み出す・信じてしまう格好の土壌となる。

現代は情報オーバーロード(情報過多)が常態化し、人間の認知限界を超えている。では、そんな状況でフェイクニュースに立ち向かう術はあるだろうか。。。

★基本データ&目次

作者笹原和俊
発行元化学同人
発行年2018
副題拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ
ISBN9784759816792
  • 第1章 フェイクニュースとは何か
  • 第2章 見たいものだけ見る私たち
  • 第3章 見たいものしか見えない情報環境
  • 第4章 無限の情報、有限の認知
  • 第5章 フェイクニュースの処方箋
  • 終章 情報生態系の未来

★ 感想

今や一国の大統領でさえ(?)フェイクニュースの発信源となるような時代。オレオレ詐欺などまだ可愛いもの。全く気が付かないうちにフェイクニュースを信じ込んでしまっているかも知れない。それは、私も然りだし、誰にでも起きうる、いや起きている状況だ。そんな状態にどうしてなってしまったのかを本書は分かり易く説明してくれている。実際に世の中で起きている(出回っている)フェイクニュースや関連の話を引き合いに出し、どんな風に伝播していったかを示してくれている箇所が多数ある。「ローマ法王はトランプ大統領を支持する(とツイートした)」という話などは、どこかで耳にした・目にしたことがあった。知っている話が出てくるとやはり興味が強くなるものだ。

特に、一人一人の人や、人間の集団はそもそもが“情報処理における癖”を持っている(認知バイアス)と言う話は納得だ。処理をするにはアルゴリズムが必要で、それには一定の傾向を持った動きとなるのは自然とも言える。これを“克服”して真実を見抜くのはなかなか大変そう。いや、不可能なのかも知れない。
と言いつつ著者は、最後に“フェイクニュースの処方箋”を用意してくれている。これで万全かどうかは分からないが、我々も強く、強く理論武装しないといけないだろうから、“武器”が増えるのは歓迎だ。

参考文献・参考サイトが数多く紹介されているのもうれしい。もうちょっと深く知りたいときに、紹介されているサイトに飛べるのは便利だ。二百以上あるという認知バイアス。本書では三つ・四つのパターンしか紹介されていないが、他にどんなものがあるのか気になるところ。
あれ?でも、これも認知バイアスの一つか?!

TwitterやFacebookをやっている人も、そうでない人も、現代を生きる我々には必読の書かも知れない。読むべし。

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