世にも美しい変形菌 身近な宝探しの楽しみ方

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★あらすじ

変形菌は身近な場所に生息する。近所の公園でも見つけることができる。ただ、非常に小さく、落ち葉の裏側など上から見ても見つけにくい。とにかく、姿勢を低くして観察することが見つけるコツだ。

変形菌は菌類(キノコやカビ)の仲間ではない。また、細菌や古細菌でもなく、核を持った真核生物だ。アメーバとして這い回り、子実体に変形して動かなくなり、胞子を飛ばして増える。動物のように動き、植物のように(菌類のように)繁殖する。

生物の分類、特に原生生物と呼ばれていたものは近年、複数の「界」に分割されている。真核生物はオビストコンタ、アメーボゾア、クロムアルベオラータ、アーケプラスチダ、リザリア、エクスカバータに細分化され、変形菌はアメーボゾアに属する。動物・菌類はオビストコンタ、植物はアーケプラスチダに分類されている。
変形菌は粘菌の一種で、粘菌は細胞性粘菌、原生粘菌、変形菌(真性粘菌)の三種からなる。

変形菌の子実体は多様な色と形を持つ。ルリホコリ類は瑠璃色、ジクホコリ類は虹色の子嚢を持つ。これらは構造色で、薄膜干渉によるものだ。胞子を運ぶ担い手となる昆虫類にアピールする狙いがあるかも知れないが、まだよくわかっていない。“構造”に個体差があるためか、その色合いも異なって見える。

観察にルーペは必須で、10倍以上の倍率があるものを選ぼう。ペンライトは、変形菌を見つけ出すのに便利。周りの環境にまぎれていても、光を当てることによって子実体が見えてくる。

★基本データ&目次

作者髙野丈
発行元文一総合出版
発行年2022
副題身近な宝探しの楽しみ方
ISBN9784829972427
監修川上新一
  • 生きている宝石、変形菌
  • 変形菌のいろは
  • 変形菌観察実践編
  • 変形菌130
  • もっと楽しむ!変形菌

★ 感想

我々に馴染み深い生物である動物や植物。それらと全く異なる生物はとにかく不思議だ。動き回っていたかと思うと、カビやキノコのように動かなくなって胞子を飛ばす。それだけでもピンとこない。さらには、人間の生物としての性(Sex)は二種類(オス・メス)だが、変形菌は百種類以上あるそうだ。もう、“意味が分からない”状態だ。
逆に言えば、いかに我々の常識が狭い範囲に限定されていたか、ほとんど無知の状態で世界を見ていたのかということを思い知らされる。生物多様性が、、、と語られることが多いが、その多様さは想像を遙かに超えている訳だ。しかも、そんな生物が身近な場所にも生息していたとは。

あらすじでは生物学的な点だけをピックアップしてしまったが、タイトルの通りに本書は変形菌の美しさを前面に押し出したカラー図鑑的な体裁となっている。一般向けの平易な内容だ。写真で見るだけでも確かに美しい。形は面白いし、光沢のある表面は輝いて見える。眺めているだけでも面白いだろう。
でも、それは子実体という形態の時で、アメーバ状態の時は全く見た目が異なる。これがニュルニュルッと(実際の移動速度はもっと遅いので、その動きは余り感じられないようですが)動くと思うとちょっとぞっとする。ハッキリ言えば気持ちが悪い。まあ、それも含めてカラー写真で紹介してくれているので、変形菌の不思議な(人から見ればだが)生態がよくわかって面白い。

暖かくなったらこの本を持って公園に行ってみようかな。さて、うまく変形菌を見つけられるだろうか。

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