★あらすじ
「科学的方法」とは
- 観察する。
- 仮説を立てる。
- 予測する。
- テストする。
- 結果を分析して仮説を修正し、やり直す。
だと言われている。しかし、科学と、科学ではないものはどんな方法を用いているか否かでは線引きできない。カール・ポパーは方法論ではなく「反駁可能性」をその条件と考えた。科学理論は経験的検証によって否定される“可能性を持っている”ことが必要だという考え方だ。
占星術や創造論“科学”は、否定されても必ず反証が可能だ。世界が六千年前に作られたなら、なぜそれよりも古い時代の化石が発見されるのかという問いに対し、神は万能だからそのように見える化石を作ることができた、と答えられる。つまり、反駁することができないのだ。ゆえにこれらは科学ではないと結論づけられる。
しかし、これでは物理学以外の学問は科学ではないと言うことになりかねない。一過性の歴史を扱う学問は検証試験ができない。つまり反駁可能性がないからだ。
科学か否かを線引きすること自体をやめるべきだ。明確な線引きではなく、科学が如何に特別なもので、地球温暖化を否定したりワクチンに関する陰謀論を信じたりするような考え方とは異なる、我々の社会をよくしていくものだということを理解することが重要だ。
その、科学を特別なものにしているのが「科学的な心構え」なのだ。
★基本データ&目次
作者 | Lee McIntyre |
発行元 | ニュートンプレス |
発行年 | 2024 |
ISBN | 9784315528084 |
原著 | The Scientific Attitude |
訳者 | 高崎 拓哉 |
監修 | 網谷 祐一 |
- プロローグ
★ 感想
原題は「The Scientific Attitude」。“科学的な態度”もしくは“科学的な心構え”といった意味だ。邦題は、似非科学や陰謀論などと「科学」の違いを客観的に述べているぞ、という点を強調したかったのだろう。内容としてはその通りではあるが、原題の方が「ちゃんとしようぜ!」というメッセージが伝わってくるかも。
地球温暖化やワクチンの有効性を否定する“勢力”がアメリカでは政権を奪取した。そんな状況で、まずは理論武装が必要だろう。ソーシャルメディアの世界では単純な二項対立の構図になりがちで、互いに罵り合うだけで、本質的な議論が全く為されない。“口げんか”をしているだけならまだいいのだろうが、ワクチン接種を拒んだり、気候変動への対応をやめてしまうのは我々の健康、いや生存そのものを脅かしかねない。科学が全てを解決してくれるかは分からないが、少なくとも“根拠のない”イデオロギーに盲従するべきではないだろう。
疑似科学、陰謀論、フェイクニュース、それらに引き込まれないようにするためには、本書は必読の一冊だろう。科学がどうして特別なもので、科学から得られるものは信じるに足るのか、本書は説いている。ソーシャルメディアで広まっているその主張が疑似科学なのか、陰謀論なのかを見抜く力を付けることが一人一人に求められている今、そのための知識の一つとして本書で語られている「科学的な心構え」を理解することが必須となっている。
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