NetGalleyを利用して読みました。
★あらすじ
島本絵美は子供の頃から引っ込み思案で、そのせいで就職活動も全く上手くいかず、不合格の連続だった。兄の陽太もそんな妹が心配でしょうがない。だが大手企業の「モリヤ食品」の面接を受けたところ、なぜかいきなり採用決定となった。「社長」と呼ばれているその男(自らを「ヤン」と名乗る)になぜか好かれたようだ。絵美は驚き、戸惑いもするのだが、その「社長」に絵美も惹かれてしまったのだ。
実は、絵美には不思議な力があった。人には見えない“異形のもの”が見えてしまうのだ。彼女が引っ込み思案なのもそれが原因の一つだった。そいつらは“人”のようでいて、形が崩れていて、見るもおぞましいものばかりだった。
ヤンには、目玉が巨大な女のようなモノが取り憑いていた。だが、気が付くとそのモノは消えていた。それどころではない。彼女の周りにあれほど蠢いていたモノたちがいなくなっていたのだ。
そんなヤンに、モリヤ食品の研修センターのような場所に呼ばれた絵美。その後、彼女は連絡を絶つ。
兄の陽太は心配になり、佐々木るみの事務所を訪ねた。佐々木るみは心霊現象にまつわる“案件”を扱う、不思議な事務所の所長だ。大学の後輩でもある青山幸喜が事務員を務めている。
この事務所には、他で相手にされない・されなくなった依頼人が最後に訪ねてくる。もちろん、依頼の全てが心霊現象によるものではなく、普通の事件だったり、依頼人の精神状態によるものがほとんどだ。だが、中には“本物”が混じっている。そして今回の事件はまさにそれだったのだ。
所長の佐々木はその筋の人脈が太く、心霊現象の内容によって助っ人を選び、雇う。今回はミシャグジ信仰を持つ石神が適任だと思われた。そして、石神をモリヤ食品の研修所に送り込んだのだが。。。
★基本データ&目次
作者 | 芦花公園 |
発行元 | KADOKAWA(角川ホラー文庫) |
発行年 | 2021 |
ISBN | 9784041112304 |
- 第一章 べやと
- 第二章 ぱしよん
- 第三章 おらしよ
- 第四章 てんたさん
- 第五章 ばうちずも
- 終章 なたる
★ 感想
作者の名前に惹かれて読みました。「芦花公園」は何度か行ったことのある公園なので。
民俗学的な話、宗教の知識を織り交ぜてオカルト・ミステリーに仕立てている。モリヤ食品ではいかにも怪しげな、新興宗教団体のような「儀式」が執り行われている。その有様を、諏訪大社に伝わる奇祭に似せていたり、かと思えばキリスト教からアイデアを得たりという感じだ。
面白くはあるんだけど、残念ながらもうちょっと突っ込んでも良かったかな。結局、諏訪大社の逸話に関しては放って置かれたまま話が終わってしまったし。オドロオドロシさはあったんだけど、「ダヴィンチコード」のような、なるほどね!というところまでは行っていなかった。
まあ、心霊現象が軸なんだけど、その根っこは親のニグレクトだったり、逆に過剰な独占欲だったりがあって、やっぱり怖いのは人間だよ、ってことなのかもしれない。
と言いつつ、話自体は面白かった。怪しげな存在として登場した「ヤン」の正体もさることながら、島本兄妹の関係だったり、探偵(?)事務所の二人のそれぞれのバックグランドだったりが色々と複雑に設定されている。そんな登場人物たちが絡み合って進む話にはついつい引き込まれてしまった。
この二人が活躍するシリーズ、続きが読みたくなりました。
映像化しようとするとちょっとグロテスクな描写ばかりになりそうだけど、映画になったら面白そうですね。読んでいて場面が目に浮かぶ感じ。そういうのがお好きな人にはおすすめです。
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