科学の迷信

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★ あらすじ

既に、科学的に否定されている事柄なのに、未だに多くの人々が信じてしまっていることは多々ある。歴史的なむかし話もあるが、現在に至るまで“生き残っている”迷信も少なからずある。そんな話題を集めたのが本書だ。

ツタンカーメン王の呪い

考古学者ハワード・カーターに資金提供し、墓の開封にも立ち会ったカーボン卿は呪いで死んだ、と言われているが、彼の死は十六年後の話だ。他の発掘作業者も(すぐに)死んだものはいない。カーターが墓泥棒を寄せ付けないためにそのような噂を故意に流したのではとも言われている。

指の節を鳴らすと関節炎になる

ドナルド・L・アンガーは、片方の手はポキポキ鳴らすが、他方は鳴らさないという実験をなんと六十年も続けた。結果、鳴らした方だけ関節炎になる、等と言うことはなかった。
関節炎になると軟骨がダメージを受け、ポキポキと鳴ることがある。詰まり、原因と結果が逆だったのだ。

ワクチン接種は自閉症を引き起こす

麻疹・おたふく風邪・風疹の三種混合ワクチン接種が自閉症を引き起こすと、英国の医師が論文を発表した。しかし、サンプル数が十二人しかなく、のちに不正があったとして論文を掲載した科学雑誌は撤回している。
また、ワクチンの防腐剤チメロサールが自閉症の原因となると訴える団体があるが、その防腐剤は一部のインフルエンザワクチンにしか使用されていない。
しかし、未だにその関連性を信じる人々がいて、子供へのワクチン接種を拒んでいるため、米国では麻疹がふたたび流行するに至っている。

★ 基本データ&目次

作者ナショナル ジオグラフィック
発行元日経ナショナル ジオグラフィック社
発行年2018
副題世界をまどわせた思い込みの真相
ISBN9784863134232
原著100 Hoaxes & Mistakes That Fooled Science
  1. 物理と化学の迷信
  2. 古代の迷信
  3. 人体の迷信
  4. 生物の迷信
  5. 地球の迷信
  6. 宇宙の迷信

★ 感想

「そんなことは知っているよ」という話も多かったが、中には「へぇ、そうだったのか」となることもあり、気軽に楽しめる一冊だった。また、「こんなことがまだ信じられているのか?!」と驚くとともに、“常識”となってしまった“迷信”はなかなか駆逐できないんだなと改めて思わされた。

「ワクチン接種が自閉症を引き起こす」という話だったり、「ホメオパシーの効果」を未だに信じている人がいるのは、結果として病気を広めてしまうため、害を為すことにもなる。困った問題だ。
と言いつつ、自分も「そうだったのか」と思わされることとして「物体の三相」「五感」「黄道十二宮」などの話。物体には気相・液相・固相の他にもプラズマ状態などがある訳だから、三つではない。人間の感覚も五感以外に乾き、痛み、それに尿意なんて“感覚”もある。身体の状態や外界からの情報を得る方法は五つだけではない。さらに、黄道に“引っかかっている”星座には蛇遣い座もあり、全部で十三だ。誰かがある時にまとめた際の数が、そのまま“制限”となっていて、他の存在を忘れさせてしまうのだ。本書はそんなことを気づかせてくれた。

単純に、雑学のネタとしても悪くはなかった。「一酸化二水素(H2O詰まりはただの水)」で人々が大騒ぎをした話や、「右脳と左脳の嘘」などはちょっとした場の話題に良さそう。このナショナルジオグラフィックのムック本全般に言えるが、そんなに深いところまで掘り下げてはいない。軽めの話ばかり。それが気軽に楽しめるネタとしてちょうどいい塩梅なのだ。もちろん、それぞれの話題についてもっと深く知りたくなれば、いくらでも書籍が出ているだろう。さらなる読書への良いインデックス・手引きでもある。

まあ、まずは自分が知っていたよと言う話題が100個のうちにいくつあったか数えてみましょう。迷信にまどわされやすいのか、そうじゃないのかよくわかるでしょう。

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