★あらすじ
かえるの王さま または鉄のハインリッヒ
森で遊んでいた姫は、池にまり(ボール)を落としてしまう。「まりを取り戻せるなら何でもする」と願うと、池の中から蛙がまりを持って現れる。しかし、姫は約束を守らなかった。
城に戻った姫だったが、翌日、帰るが城に現れてその旨を話す。王さまは姫に約束を守るように言うが、かえるのことが怖い姫はかえるを壁に投げつけてしまう。するとかえるは王子様の姿に戻る。姫は王子を気に入り結婚する。
ラプンツェル
子どものいない老夫婦。おかみさんは妖精の庭に生えたラプンツェルが食べたいと言い出す。亭主は盗みだし、おかみさんに与える。しかし、妖精に見つかってしまい「おかみさんは身ごもっている。その子を渡せば許す」と言われる。折角身ごもった子は妖精に連れて行かれてしまった。
妖精はその女の子をラプンツェルと名づけ、十二歳になると高い塔に閉じ込める。ラプンツェルは長く美しい髪を持っていて、妖精はその髪を伝わって塔に登っていた。
ある日、王子がその様子を見つけ、ラプンツェルの髪を使って塔に登っていった。二人は仲良くなり、やがてラプンツェルは身ごもる。怒った妖精はラプンツェルを追い出し、王子を塔から突き落とす。王子は失明してしまう。二人はばらばらになり、ラプンツェルは男の子と女の子の双子を産むが、森で貧しい暮らしを強いられる。何年か後、二人は再び会うことができ、ラプンツェルの涙で王子の目も元通りになる。
★基本データ&目次
作者 | The Brothers Grimm |
発行元 | 白水社(白水Uブックス) |
発行年 | 2007 |
ISBN | 9784560071649 |
原著 | Kinder- und Hausmärchen |
訳者 | 吉原素子 |
- 訳者まえがき
- 序文
- かえるの王さま または鉄のハインリッヒ
- 猫とねずみのともぐらし
- マリアの子
- 九柱戯とトランプ遊び
- 狼と七匹の子やぎ
- 夜啼きウグイスとめくらトカゲ
- くすねた銅貨
- ナイフを持った手
- 十二人兄弟
- ならずものたち
- 兄と妹
- ラプンツェル
- 森の中の三人の小人
- 苦しみの亜麻紡ぎ
- ヘンゼルとグレーテル
- なんでもござれ
- 白い蛇
- 旅に出たわらと炭とそら豆
- 漁師とおかみさんの話
- 勇敢な仕立て屋の話
- 灰かぶり
- 子どもたちが屠殺ごっこをした話
- 小ねずみと小鳥と焼きソーセージ
- ホレおばさん
- 三羽のからす
- 赤ずきん
- 死神とがちょう番
- 歌う骨
★ 感想
ディズニーほどではなくても、グリム童話は出版されるやいなや、「子どもに聞かせるのに相応しくはない」などの批判を受け、第二版では既に数々の変更が成されたそうだ。本書はタイトルにある通り「初版」を翻訳したもの。批判の元となった表現がそのまま残っている訳だ。
「かえるの王さま」では冒頭部分が加筆され、よりロマンチックな設定になったとのこと。そして「ラプンツェル」ではラプンツェルが妊娠したことを隠すような表現に変えられたそうだ。
また日本語訳でも、タイトルにも「めくら」や「屠殺」などのいわゆる“差別用語”がそのまま使われている。
しかし、原題は「Kinder- und Hausmärchen(子どもと家庭の(ための)メルヘン集)」となっていて、グリム兄弟は子どもたちにはこれくらいの話は問題ないと思っていたのだろう。しかし、どう考えても「子どもたちが屠殺ごっこをした話」はお伽噺として子どもに聞かせるようなものではない。イソップ童話のような教訓話でもないし、どのような基準で載せる作品を選んだのか彼らに聞いてみたい。
ただ、それを除いて素直に話を読むと、当時の人々の生活や考え方、価値観がそこに表れていて非常に興味深かった。自分の生活(生命)を守るために親は平気で子どもを捨てたり、殺してしまう。一方で、“底辺”に属している人がひょんなことから金持ちになったり王になったりする夢を見て、そんな厳しい日々の生活を忘れようとしている。そんな、現実の辛さと夢物語とが混ざり合ったのがこの童話集なのだとわかる。
白水社のこのシリーズは全五巻となっている。少なくともディズニーのファンにはすすめられないシリーズだが、さてこの先にはどんな話が出てくるのだろうか。
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