★あらすじ
ルターの呼びかけは1520年代頃からフランスにも広まり始める。カルヴァンはフランソワ一世にプロテスタントの擁護を訴えるが、プロテスタントは異端と見做され迫害を受けるようになる。カトリックとプロテスタントの衝突は激化していき、1562年についに宗教戦争と呼ばれる動乱が始まってしまう。この宗教戦争は幾たびかの中断を挟みながらも1598年まで続いていった。
フランソワ一世、アンリ二世の治世では王権は強く、各地の貴族たちもこれに従っていた。しかし、アンリ二世急死のあとを継いだフランソワ二世はまだ十五才で、妃の伯父たちが実際には国政を担うことになる。彼らは宗教面で強硬策を取ったため各地の貴族の反発を招き、一部の高官たちはプロテスタントへと改宗してしまった。ここに政権争いと宗教間の対立がクロスオーバーし、フランス国内を宗教戦争へと駆り立てていったのだった。
聖書の言葉のみを重んじるプロテスタントは、カトリックのミサをキリストへの冒涜と見なし、(カトリック)教会へ乱入して破壊行為を行った。一方、数で優るカトリック信者たちは、プロテスタントの集会を襲い、虐殺行為を行っていく。対立はさらに激化していった。
★基本データ&目次
作者 | Nicolas Le Rou |
発行元 | 白水社(文庫クセジュ) |
発行年 | 2023 |
ISBN | 9784560510605 |
訳者 | 久保田剛史 |
- はじめに
- 第一章 神とその民
- 第二章 君主が子供の国
- 第三章 戦争と平和
- 第四章 恐怖の席巻
- 第五章 闇の奥
- 第六章 国家か宗教か
- おわりに
- 訳者あとがき
- 地図
- 関連家系図
- フランス宗教戦争略年表
- 参考文献
★ 感想
日本では織田信長・豊臣秀吉・徳川家康が覇権を争っていた頃、海の向こうではこんな状況だったんだと改めて学んだ。日本でも一向一揆などの宗教勢力は大きな力を持っていたけど、宗教勢力同士が争った(殺し合いをした)というのは聞いたことがない。まあ、私が知らないだけかもしれないが。
それにしても、よくわかっていない私から見るとカトリックとプロテスタントって、殺し合いをするほど違うものなのだろうかと思ってしまう。教皇の権威が強くなりすぎた事への反発なのかと単純に考えると、貴族間の勢力争いという意味では理解できる。また、一部の聖職者が“狂信的”になってしまったことも分かる。
分からないのは、いわゆる“市民”もこの戦争に加担したこと。聖バルテルミーの虐殺では民兵も虐殺者の側に加わっていたそうだし、「鋭利な道具の扱いに慣れた・・肉屋はしばしば虐殺の中心的役割を果たした」そうだ。地元の(?)貴族に従ってと言うことなのだろうか。この時代の教育水準を知らないが、パンとブドウ酒がキリストの身体に変化するのか、単なる象徴なのかと言った神学的(?)違いを理解していたとは思えない。当時の社会の雰囲気というか、常識というか、そんなものが分からないとこの疑問は解決できないのだろう。
日本の戦国時代の歴史だと地方の戦国大名の名前も有名所はある程度知っているが、フランスとなると知らないことばかり。王室の元、封建領主たちの群雄割拠という状態だったのだろうが、どんな“主要”地域があったのか、そしてそこの領主は誰だったのかの基本的な知識がないとなかなか難しい。もちろん、フランス国内だけではなく、神聖ローマ帝国やら教皇やら他の国々とも直接的に絡まっている。まだまだ勉強せねば。
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