宇宙人と出会う前に読む本

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★あらすじ

主人公は、銀河にあまたある惑星から国際(銀河際)交流のために“宇宙人”たちが集う場に参加している。そこでは各宇宙人たち(もちろん、地球人である主人公も)が“何らかの仕組み”によってある程度は身体の大きさも同じくらいにされ、超高性能翻訳機によって互いにコミュニケーションが取れるようになっている。

いろいろな星からやってきた“人々”と交流を持つ主人公。だが、彼らの質問に都度、面食らってしまう。「あなたはどこから来たのか?」という問いも、「地球の日本だ」と言ったって通じるわけがない。銀河の中で太陽(太陽系)の位置をどの様に表現すればいいのだろうか。

「あなたの太陽はいくつですか?」とも問われた。実は、銀河の中の恒星の多く(50%以上)は連星系を成している。太陽が一つではない方が多いのだ。そんな連星系の周りを回る惑星の住人は、暦を作るだけで一苦労だ。いや、「一日」という概念さえ異なるだろう。彼らのカレンダーを見た主人公は頭が混乱してしまう。

「数をどの様に数えるか」もまた問題だ。地球人は手の指が左右合わせて十本であることから“指折り数える”ことを通して「十進法」にたどり着いたと想像される。宇宙人に「指」があるかもわからないし、そもそも左右対称かも怪しい。主人公はたまたま二本腕の宇宙人に遭遇するが、彼らは右手が三本指、左手が六本指だった。左手で六まで数えると右手の一本の指を折る、それを繰り返すと二十四進法に行き着く。何進法であろうと数の概念に違いはないのだが。

その他、「力をいくつ知っているか」とも問われた。(地球の)現代物理では電磁気力・強い力・弱い力・重力の四種が知られているが、それら全てを統一的に扱える理論にはまだたどり着いていない。地球よりも高度に発展した文明を持つ星の住人たちから見れば「何だ、そんな辺りで躓いているのか」と思われるだろう。

主人公の驚きの体験はまだまだ続く。

★基本データ&目次

作者高水 裕一 
発行元講談社(ブルーバックス)
発行年2017
副題全宇宙で共通の教養を身につけよう
ISBN 9784065243114
  • プロローグ 宇宙のとあるカフェにて
  • 第1章 あなたはどこから来たのですか?
  • 第2章 あなたは何でできていますか?
  • 第3章 あなたたちの太陽はいくつですか?
  • 第4章 あなたは力をいくつ知っていますか?
  • 第5章 宇宙の破壊者を知っていますか?
  • 第6章 宇宙の創造者を知っていますか?
  • 第7章 宇宙最古の文書を知っていますか?
  • 第8章 あなたは左右対称ですか?
  • 第9章 数のなりたちを知っていますか?
  • 第10章 宇宙人の孤独を知っていますか?
  • 第11章 エネルギーは何を使っていますか?

★ 感想

タイトルに惹かれて読んだ(オーディオブックで聴いた)一冊。ブルーバックスの作品だからもちろん(?)単なるSFではない。科学的な知見に基づいた話ばかりだ。
と言いつつ、著者も書いているようにそもそも銀河中の宇宙人たちが一箇所に集まって交流を持つという事自体は(ほぼ)フィクションではあるが。

我々の銀河の中では(他でもそうかも知れないが)連星を成している恒星が半分以上なのだそうだ。「太陽は一つ」という、我々にとってはあまりにも当たり前のことが、実はだいぶ常識外れだったということにまず驚かされた。Netflixでドラマ「三体」を見たばかりだったので、太陽が複数ある惑星の世界はさぞ地球とは違うんだろうなぁと思っていたところだった。三体問題でさえ解けないというのに、太陽が七つもある惑星ではどういう事になっているのだろうか。

学生の頃に読んだ筒井康隆の作品「ワースト・コンタクト」を思い出した。宇宙人が地球に来訪するが全く常識が通じず、善悪や価値観も異なるので大騒ぎになる、といった粗筋だったと思う。まあ、実際に宇宙人がどんな姿なのか想像もできないが、論理構造が“似ている”ことを期待するしかないだろう。その時には本書の内容が確かに役立つかもしれない。
まあ、そんな機会がなかったとしても、常識にとらわれず、当たり前と思われる前提さえも疑ってかかる(異なった条件の場合を考える)という柔軟性は、科学者のみならず我々も心しておかねばならないだろう。「頭を柔らかくして考えるべし」とはよくハウツー本で言われているセリフだが、柔らかくするならば徹底してここまでやらねばならないようだ。

話の内容は最先端の物理学だったり、天文学だったり、さらには数論まで出てくる。だが、舞台設定をSFチックにしてくれているおかげで飽きずに読み進めることができる。一般向けに科学を解く本としてはよくできている。楽しく学べる一冊。おすすめです。

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