40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか

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★あらすじ

「40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか」の問いに対する答えはYesだ。しかし、「体温」に関して良く理解しておくことが重要だ。また、人は暑さを気温“だけ”で判断しがちだが、人の体温に影響する環境因子はそれだけではないことも知っておくべきだ。本書を通して、体温や温度に対する間違った常識を壊しながら、暑さについて改めて考えてもらいたい。

“体温”として重要なのは、一般的な体温計で測る皮膚の温度ではなく、身体の内部の温度だ。これをコア温と呼ぶ。脳や内臓など、人の生命活動の中核を担っている箇所の温度だ。皮膚温は個人差も大きく、変動も大きい。しかし、コア温の個人差は小さく、37℃±0.5℃だ。

人のみならず、動物は全般的にこのコア温の変動に弱い。コア温が上がると細胞内の酵素の働きに影響が出て、それは即、生命の維持に関わる問題となってしまう。このコア温を一定に保つことが重要だ。そのために、人の身体にはコア温を測る(感知する)仕組みが備わっているのだが、その仕組みは完全には解明されていない。様々な神経組織が関わり、脳の各種部位や他の器官がその制御を行っている。

卵をフライパンで熱するとできる目玉焼き。固まった白身や黄身は、冷めても元のドロドロした状態には戻らない。実は熱中症でも類似のことが起こり、コア温が上がりすぎると“不可逆的(元に戻らない)”ダメージが身体に生じてしまうのだ。運良く生き延びても後遺症が残ってしまう。

★基本データ&目次

作者永島計
発行元化学同人 DOJIN文庫 014
発行年2019
副題体温の科学から学ぶ猛暑のサバイバル術
ISBN9784759825145
  • はじめに
  • 第1章 環境と人の関係
  • 第2章 カラダの温度とその意味
  • 第3章 カラダを冷やす道具たち
  • 第4章 温度を感じるしくみ
  • 第5章 脳と体温調節―考えない脳の働き
  • 第6章 フィールドの動物から暑さ対策を学ぶ
  • 第7章 熱中症の話
  • 第8章 運動と体温
  • 第9章 発達、老化、性差など
  • 第10章 温度や暑さにかかわる分子や遺伝子
  • おわりに 40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか
  • 参考文献および引用文献

★ 感想

2019年に発行された一冊だが、最近の酷暑を受けて(?)文庫化(DOJIN文庫)された。私もこの書名に惹かれて読んでしまった。結論から言うと、非常に真面目な内容で、とても勉強になった。胡散臭い書名だったか、著者は人の体温の仕組みを研究している、いたって真面目な学者。話の進め方も「まず体温とは何か」の定義(再定義?)から始まり、それを維持する仕組みや、維持できなくなった時に起きることなどを順に紐解いていってくれる。そして、未だ解明されていないところは素直に認めて、変にごまかしたりしていない。そのため、とても納得感のある内容だった。

筆者も言っているように、私も皮膚の温度と体内の内臓や脳みその温度との違いをほとんど意識することがなかった。脇の下に挟む体温計で測った“体温”が上がった、下がったとしていた。科学捜査をテーマにしたTVドラマで、遺体の体温を測るのに肝臓に針を刺したり(ローストビーフ用の温度計みたいな奴)、肛門からプローブを突っ込んで直腸の温度を測ったりなんてシーンはよく見ていた。だがあれも、皮膚温が外気の影響を受けやすいから身体の内部を測るのだという程度にしか思っていなかった。
確かに、言われてみれば脳みその恒常性(コア温)を保つことが即、生命活動の維持にとって重要なことに決まっている。

さらに、熱中症が“不可逆”なダメージを与えるということも、聞けば納得できるがそこまで意識していなかった。思っている以上に恐ろしい“病気”なんですね。猛暑日に外に出るのが怖くなりそう。
そんな熱中症を防ぐためには、身体がどのように体温維持をしているかの仕組みをよくよく理解している必要があることも納得できた。人の身体とはつくづく良くできているなぁと感心してしまう。

とは言え、40℃超えの国で暮らすのはシンドイ。人の力で何とかなるのか分からないけど、気候変動は何とかしないといけないと思ったのでした。とにかく、勉強になる一冊。今の日本人にとって必読の書と言えましょう。

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