NetGalleyを利用して読みました。
第2章までを先行して読みました。あらすじや感想はそこまでの内容についてのものです。刊行後に全部読んで追記するかもしれません。
★あらすじ
イカ、タコ、オウムガイ、そして絶滅したアンモナイトが属しているのが頭足類(とうそくるい)。五億年に渡って地球上(海中)に存在し、数千年前から人類の興味を捉えていました。アリストテレスは彼らの身体の色の変化に驚き、ジュール・ヴェルヌは海のモンスターとして小説に描いています。
そんな彼らは無脊椎動物の中で最も大きく、そして複雑な脳を持っています。鳥類や魚類に匹敵する脳によって、鋭い感覚、複雑な行動を進化させているのです。中でも、「迅速な体色の変化」は特徴的で、色素胞と反射細胞(発光器)を発達させて、カモフラージュ・警告・捕食者からの逃避をしているのです。
一般に「足」と呼ばれている部位は、分類学的には「腕」または「触腕」に当たります。それらは直接、頭部に付いているため「頭足類」と名付けられたのです。
タコの場合、「頭」の両側には大きなレンズ眼がついていて、その間に大きな脳が収まっています。口は八本の腕の集まるところ(付け根)にあり、オウムのようなくちばしと、ヤスリ状の舌(歯舌)が付いていて、食べ物を細かく砕きます。
一般に頭と思われているのは胴体で、内臓類が収められています。食道は脳の真ん中を通る形になっていますが、これは消化器官周りの神経組織が発達していって脳に進化していった、無脊椎動物によく観られる形です。イカも同様の形態をしています。
イカやタコの祖先はアンモナイトのように殻を持っていたと考えられていますが、進化の中で殻は退化し、一部の種では「甲」として身体の中に包み込まれて残っています。
一方でオウムガイは今も殻を持っています。また、オウムガイの眼はピンホールカメラのような構造をしていて、タコやイカとは異なり、レンズを持っていません。
頭足類の循環器系は、他の軟体動物とは異なり、閉鎖系です。動脈、毛細血管、静脈を血液が通って体中に運ばれるのです。ただ、血液の組成は脊椎動物と異なり、ヘモグロビンではなく、銅を主成分とするヘモシアニンです。ヘモグロビンに比べると酸素を運ぶ効率が悪く、魚類などとの競争には不利になっています。
彼らの血液は銅が主成分なので青色をしています。彼らは「貴族の血」を持っているわけですね。
★基本データ&目次
作者 | Roger Hanlon, Louise Allcock, Mike Vecchione |
発行元 | 化学同人 |
発行年 | 2020 |
ISBN | 9784759820522 |
原著 | Octopus, Squid & Cuttlefish:The worldwide illustrated guide to cephalopods |
訳者 | 池田譲 |
- 第1章 体の構造
- 第2章 系統と進化
- 第3章 風変わりな暮らし方
- 第4章 行動、認知、知性
- 第5章 人類との関わり
- 用語集
- 参考文献
- 索引
- 謝辞
★ 感想
アンモナイトといえば、三葉虫と並んで化石の代表格。その(直系ではないけど)子孫であるオウムガイも、殻の持つ幾何学的美しさと、優雅な泳ぎでとても魅力的。そんな彼らとタコやイカが”親戚”だというのがまず不思議。でも、イカの甲や、タコの薄い軸のような組織が、その昔は「殻」で、進化していくうちに身体の中に取り込まれたものなのだと分かって納得。
よく、食卓にも登場するタコやイカだけど、知らないことばかりでした。彼らの食道は脳を貫いて通っているなんて。食事をするたびに脳が圧迫されておかしくならないのかな。「食事が脳を通らない」と彼らは嘆くことがあるのかも。
まあ、だからこそくちばしが発達したんですね。あれでガリガリと餌を噛み砕いて、食道を通るまでに小さくしている。ちゃんと噛めなくなったら、食事が喉(脳)を通らなくなるか、でっかいまま飲み込んで脳がおかしくなるかしちゃう、まさに死活問題。「歯は大切」なのは人に限ったことではないようです。いや、彼らのほうが深刻か。そんな同情さえ覚えるほど、不思議だけど”良くできた”構造を持っている彼らに大いに興味を持ちましたよ。
タイトルに図鑑とあるように、説明には豊富な写真が使われています。彼らの不可思議な身体や、色鮮やかな皮膚は言葉では説明しきれない。写真があってこそよく分かるというもの。個々の種の写真はもちろん、餌を捕まえた瞬間の姿や、カモフラージュで体色を変えたところや、姿かたちまで変化させた様子も写真で見れば納得。面倒な説明を飛ばして、写真だけ見ていてもきれいで楽しいかも。
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原著はこちら。
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